【まとめ】創業(事業)計画書の作り方&書き方
日本政策金融公庫(以下、公庫とします)では、 以下のパンフレット「創業の 手引+」を公開しています。 一度、こちらを参照してみてください。
「創業の 手引+」をみると、さまざまな質問が掲載されています。 自分の事業とはいえ、何も準備しないで面談に臨めば、その質問に対する回答はしどろもどろになってしまいます。 伝えたいことが公庫の担当者に伝わらないといったことも発生しえます。
したがって、事前に創業計画のポイントを図でまとめたり、文章にまとめておくことで、 公庫の融資担当者の方から質問を受けても伝えるべきポイントを適切に伝えられます。
では、どんな切り口で事前準備をしたらよいのかをこれ以降ご紹介します。
創業計画書のポイント
創業計画書で記載する内容を大きく2つに分けて整理しましょう。
- お客様に関すること
- 美容室運営(自社)に関すること
(当たり前ですが)お客様に関することが8割
いくら美容室の業務運営がうまくできても、お客様に知ってもらい、来店してもらい、繰り返し利用していただかなければ事業がうまくいき続けることは有り得えません。
したがって、経営への影響・重要度で重み付けすれば、お客様に関することは8割、美容室運営に関することは2割くらいになります。
お客様と美容室運営に関して、おすすめする「8つ」の切り口
美容室経営を語るうえで、私がおすすめするのは経営の要素を8つに分けることです。
上記のように、①から⑧までを考え、それを図にしたり、テキストにしたりして、公庫の担当者に伝えることが「創業計画書」では求められています。 創業計画書の構成は以下のようなものになります。
第Ⅰ章の創業動機・事業経験から順にみていきましょう。
第Ⅰ章 創業動機・事業経験
略歴と実績
まず、略歴と実績を簡潔にまとめましょう。これはあなたの実力の証明になります。
- 受賞歴など
- 最高月間売上高(直近の売上高)
- 平均客単価
- 固定客の人数(引継ぎ許諾済みか)
- 指名客の人数(1月あたり)
- インスタフォロワー数
などです。 ここに記載する内容でだいたい実力がわかってしまいます。
詳細は後述しますが、 美容室の開業初期において、美容室が成功するポイントを3つご紹介します。 この3つの条件を満たしているスタイリストの方は、1店舗目の成功確度はかなり高くなります。 したがって、創業計画書は自分で作るのは完全に時間の無駄になるので、私共にお任せください。
- SNSフォロワー数が1~3万を超えていること (現勤務先からアカウントの引き継ぎ許可を得ている)
- 現勤務先で固定客が少なくとも200人を超えていること (現勤務先から固定客の引継ぎ許可を得ている)
- 固定客の大半が女性客であり、 カットのみならずカラーやハイトーンカラー(ブリーチ)のお客様が多いこと
この詳細は別の記事でご説明します。
スライドイメージ
これまでの略歴と実績(社内での表彰歴、月間最高売上、平均売上、固定客数なども)を記載し、独立開業に足る人物であることを証明しましょう。
参考:公庫の問い(創業の手引きより抜粋)
- 美容師としての勤務経験は十分ですか?
- 勤務時代に任されていたこと(担当業務、役職等)や実績(担当顧客数、自らの売上、コンクール入選有無等)をきちんと答えられますか?
- 短い年数で勤務先を複数回変えている場合、その理由を説明できますか?
- 過去に事業を経営し、既にその事業をやめている場合、廃業理由を説明できますか?
- 経営者になるためのスキルは十分身についていますか?
創業への想い(サロンのコンセプト)
なぜそもそも事業を自ら始めようとしたのかを伝えましょう。 Whyから始めなければ、相手の心を動かすことはできません(参考:ゴールデンサークル理論)。 どんなに練られた戦略・戦術であっても、創業者の気迫に勝るものはありません。 どんな事業計画をどのように進めていくかの前に、なぜ事業を始めようとしているかを伝えましょう。
事業開始の動機、目標、なぜあなたがそれを提供するのか (存在意義的なもの)
創業の動機にあたるものをご自身のことばで整理します。 なぜ創業したいのか、なぜ今なのか、その心構えがあるのか、創業の準備ができているのかなど、日々の姿勢や心構えなども問われます。
公庫の担当者に聞かれるかどうかにかかわらず、
- なぜ今のタイミングで創業するのか、
- 人生で実現したい目標は何なのか、
- その目標を達成するために必要な資金はいくらか
などは、「人生計画」として準備しておきましょう。
もし、その「人生計画」を達成するのに必要な資金がこれから始める事業で稼げないのであれば、事業の計画を見直すべきかもしれませんし、そもそも別の事業(美容室以外の何か)を始めることを考えなければならないかもしれません。
お気に入りの飲み物を片手にじっくりと時間をかけて静かな場所で、 ご自身が生きているうちに、実現したいことや達成したいことをノートに自由に書き出してください。
参考:教育費用
参考:生活費
参考:記念日、趣味、生きがい
参考:公庫の問い(創業の手引きより抜粋)
- 創業することによって実現したいことは明確になっていますか?
- 創業は思いつきではなく、以前から考えていたことですか?
- 創業することに対して家族や周囲の理解はありますか?
- 創業の準備が整っていないのに、良い物件が見つかったという理由だけで物件の契約をしていませんか?
無事に人生計画が描けたら、それに必要な資金も大まかに掴んでいることと思います。 描いた人生計画に必要な資金を仕事をして稼ぐための計画が事業計画です。
なぜ事業を始めようとしているかを伝えたら、 次に、どんな事業計画を具体的にどのように進めていくかを説明しましょう。
第Ⅱ章 商品・サービス編
顧客の悩みはなんですか?
生きていれば髪は伸び続けるし、日本にある信号機の数よりも美容室の数の方が多いことから、顧客の悩みがなかった(*)ということはないとは思います。
* スタートアップが失敗した理由として、"NO MARKET NEED"「市場ニーズがなかった」と回答した企業は35%もあったそうです。
出典: CB Insights(https://www.cbinsights.com)/The Top 12 Reasons Startups Fail August 3, 2021付け記事より
とはいえ、そもそもあなたが提供する商品やサービスがお客様のどんな悩みを解決するのかを具体的に考え、お客様に訴求・伝達しなければ、無数にある美容室の中に埋もれてしまい、お客様から見つけてもらうことはないでしょう。
したがってまず、
- 顧客の悩み(課題)が何かと、
- 補足情報として、(現在あなたのサービスがない)顧客はその悩みをどのように解決しているのか
まで説明できるとよいです。
スライドイメージ:顧客の課題
顧客の課題について3つ程度に分類しまとめのページを用意します。
さらに、その課題毎に課題(お悩み)が発生する原因やメカニズムなどを説明します。
参考:公庫の問い(創業の手引きより抜粋)
顧客の課題が特定できたら、次にあなたの美容室がそれらの悩みを解決できることを説明します。
美容室が提供する解決策(ソリューション)はなんですか?
美容室のコンセプト
お客様が抱える悩みに対するあなたの個々の打ち手は次以降に説明するとして、 その前により上位の概念である美容室のコンセプトが何かを説明しましょう。
美容室のコンセプトによって、内装等やWebサイトなどの配色、 クリエイティブに統一感が生まれます。 美容室のコンセプトは、自分の言葉で発見し、整理整頓しておきましょう。
商品・サービスのコンセプトがなければ、お客様に繰り返し利用して頂くような美容室になることはないでしょう。それはちょうど、イチゴのないショートケーキのようなものだからです。ただクリームを塗りたくったスポンジケーキをお客様に提供するケーキ屋さんになってはいけません。
お客様は施術の技術だけで美容室に通い続けるわけではありません。 美容室のコンセプトに一貫性を持たせましょう。
スライドイメージ:商品やサービス
美容室のソリューション
次に、顧客の悩みを解決するソリューション、つまり、あなたの美容室が提供する商品・サービスを説明します。
スライドイメージ:商品やサービス
お客様のお悩みを3つに分類したので、あなたのソリューション(課題に対する打ち手)もそれぞれ3つに分けてもよいでしょう。
参考:公庫の問い(創業の手引きより抜粋)
- お店のコンセプトと提供サービスが一致していますか?
- 提供メニュー表(ドラフト)をみせてください。
なぜ、あなたがサービスを提供できるのですか?
あなたの提供する商品・サービスが他の美容室のそれと比較して何が優れているのか、 他店ではなく、あなたのお店を選んでもらえる理由を(できれば競合比較しながら)説明します。
このときにどのような軸(切り口)で比較をするのかは、ご自身のセンス(経験・直観など)が問われます。 2つの軸で分類すると、大きく4つのタイプに分けられます。
参考:公庫の問い(創業の手引きより抜粋)
- 技術面、接客面のセールスポイント(自社の強み)は何ですか?
- 技術面、接客面以外で、セールスポイント(自社の強み)になるものは何ですか?
- 他店ではなく、あなたのお店を選んでもらえる理由を説明できますか?
競合分析
出店予定エリア(商圏)の競合は、どのような特徴があるか(どのタイプに該当するか)を調査します。 調査結果から、上図で整理した美容室のタイプが近隣になかったり、 あるいはあっても、あなたの美容室が勝っているだろうポイントを説明します。
※このあたりの軸(切り口)を設定する工程は、なかなか難しいかもしれません。 私共にご依頼頂ければ、サポートさせていただきます。
第Ⅲ章 事業戦略編
客層とエリア
どんな客層に商品やサービスを提供するのかを説明します。 ここでは、美容室のコンセプトに合ったカットモデルの方の写真を複数枚カラーで用意してもよいでしょう。
出店予定地がターゲット顧客にマッチしたエリアであることを説明します。 出店予定地の住民やそのエリアの流入人口の属性がどんな人なのかを説明します。
参考:公庫の問い(創業の手引きより抜粋)
- 出店予定地近くの住民の特性やライフスタイルを把握していますか?
- 出店予定地は新規客(顧客ターゲット)を獲得しやすい場所にありますか?
- どんな客層(誰)をターゲットにしますか?
営業方法について
新規のお客様をどのように獲得する予定なのか、自力でできることと、外部の専門家の力を借りてやることにわけて説明します。
スライドイメージ:営業
自力で集客する方法にはSNSの活用があげられます。 今のSNSのフォロワー数や投稿のリーチ数をアカウントから取得し、自ら集客できることを証明します。 有力な外部の協力者(親族や友人なども含まれます)がいれば、記載しておきます。
※そもそもすべての業務を自ら行う必要はありません。特に、開業当初の6か月間は立ち上げ期の重要な時期です。そんなときに、お客様に関する以外のこと(美容室運営に関すること:不慣れな管理業務全般のこと)にあなたの時間を投下するのは費用対効果が悪いため、おすすめできません。立ち上げ期こそ、外部の専門家にアウトソースすべきです。あなたは直接顧客と対面する時間をできる限り増やし、お客様に満足して頂き、リピートしてもらわなくてはいけません。
顧客について
一度でも来店されたお客様にリピートしてもらわなけば、美容室の経営は成り立ちません。
したがって、既存顧客に繰り返し利用して頂くためにどんなことに取り組むのかを説明します。
スライドイメージ:顧客
このスライドが対応する公庫の問い(創業の手引き)
組織体制
第Ⅳ章 計数計画
最後に、計数計画として数字にまとめていきます。
以下のような数字を基にスプレッドシートやエクセルで財務シミュレーションをやります。
なお、細かい計算やスプレッドシートやエクセルの操作・作業は専門家である私共にすべてお任せください。以下の項目に必要なものを質問しますので、答えて頂くだけです。
- 計数計画の基礎情報
- 営業(売上と売上原価・販売管理費など)計画
- 投資計画
- 財務計画(借入金の返済計画)
そうすると、以下のような将来予測ができます。
年次計画
月次資金表
これをA3用紙かなにかに打ち出します。
最後におまけ
税理士・公認会計士とITエンジニアのバックアップ体制があることを伝えれば、 金融機関からの信用もぐぐっと増します。
スライドの並び替え
最後に、素敵な表紙と目次を追加し、説明しやすいように並び替えます。
おわりに
こんな感じで、私共では創業計画書と計数計画を作り上げていきます。
計数計画は月次予算とし、月次でまとめた実績数値と比較し、月次の予実分析することができます。もちろん、私共がフォローさせていただきます。
私共は美容室に特化して開発したPOSアプリ「カッチブーン」も開発しています。
事業計画を作りながら、メニューの登録なども同時にアプリにしていきます。もちろん、私たちに登録もお任せください。ごちゃごちゃしたメニュー表ではなく、適切に正規化されたメニュー表を作り、シンプルでスタイリッシュな予約画面を作ります。
せっかく美容室を独立開業したのに、施術に集中できない!なんてことが起きないように、私共が施術に集中できる環境をIT面からも管理業務面からも全面支援いたします。
ご連絡お待ちしております。